協会職員2名(永野裕子 主任技師、崔健 技師)がSWAT国際会議2025(韓国・済州島)に出席し、発表を行いました。
※SWAT(Soil and Water Assessment Tool): 流域内の水の流れや土砂・栄養塩の動態、作物成長などを長期的に予測・評価できる準分布型水文モデル。
発表年月: 2025年6月
発 表 者: 永野 裕子※1
共 著 者: 崔 健※1、大庭 流維※1、山本 英恵※1、小野寺 真一※2
※1 日本森林技術協会、※2 広島大学大学院先進理工系科学研究科
タイトル: Evaluation of the Impact of Forest Cover Change in the Upper Kikuchi River Basin on Sediment and Nutrient Transport to the Ariake Sea、Japan (菊池川上流域における森林被覆の変化が有明海への土砂・栄養塩類輸送に与える影響の評価)
要 旨 : 近年、日本の九州北西部に位置する閉鎖性海域である有明海では、雨期の富栄養化や乾季の貧栄養化により、海洋環境の悪化や漁業の衰退といった深刻な課題に直面している。さらに、気候変動に伴う豪雨や山地災害の頻発化がこれらの課題をより一層深刻化させる懸念もある。
こうした社会課題の解決に向けて、近年では「自然を活用した解決策(NbS:Nature-based Solutions)が注目されている。なかでも森林は、水量調節、水質浄化、土壌侵食防止といった生態系サービスを通じて、人々の経済活動や健康、福祉、安全の維持に貢献することが期待されていることから、森林生態系の保全・管理が海域環境に与える影響の定量的な評価が望まれている。
しかしながら、森林域では観測データが限られており、また水が流下する過程では、水田、畑地、市街地など多様な土地利用の影響を受けるため、森林の効果のみを抽出して評価することは難しく、調査事例も多くはない。こうした背景を踏まえ、本研究では、様々な土地利用/土地被覆の分布や状態を考慮できる準分布型流出モデル「SWATモデル」を用い、菊池川上流域の森林被覆変化が有明海への土砂・栄養塩の輸送に与える影響の定量的な評価を試みた。その結果、上流域における林相の変化は、流域全体から有明海へ輸送される水や物質量に有意な影響を与えない一方で、森林地を他の土地利用に転換することは海域への物質流出量に大きな影響を与える可能性があることが示唆された。
SWAT国際会議2025(韓国・済州島)
会議アジェンダ
発表資料