セミナー報告
No.1天然更新や天然林施業はどこまで可能なのか
No.2長伐期林は伐期をのばすだけで作りうるのか
No.3地球温暖化は森林整備にどのような影響を与えるか
No.4森林情報のIT化は何を可能にするか
No.5森林情報は必要な事項が適確に把握されているのか
No.6森林整備目標は森林所有者等に徹底しうるものとなっているか
No.7造林コストはどこまで下げうるか
No.8望ましい森林施業を達成するための森林計画等はいかにあるべきか
No.9団地化、作業の集約化はどこまで進みうるか
No.10路網整備を加速化させるためには何をすべきか
No.11我が国に合った林業機械のあり方とは何か
No.12素材生産の生産性はどこまで向上させられるか
No.13国産材の供給可能量はどのように見通せるか
No.14住宅用需要に今後どのように対応すべきか
No.15国産材の製紙用需要はどこまで拡大できるか
No.16大型加工工場は国際競争力を持ち得たか。中小加工工場はどのように対応すべきか
No.17森林、林業、木材利用の改革についての意見
No.18今後の森林組合はいかにあるべきか
No.19望ましい林業労働者は確保されているか
No.20森林・林業の普及指導は有効に機能しているか
No.21大学の森林・林業教育は何を目指しているか
No.22林業高校は森林・林業技術者の育成を担いうるのか

PDFダウンロード資料
♦ 30の提言(素案)
♦ 30の提言(素案)に 対するご意見等
♦ 30の提言(最終版)
♦ シンポジウム議事録
♦ シンポジウム会場か らのご意見等

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セミナー報告

第17回セミナー 森林、林業、木材利用の改革についての意見
 内山右之助氏(有限会社内山林業代表取締役)
 中尾由一氏(国産認証材利用促進協議会会長)

◆セミナーの課題

 今回のセミナーは,川上と川下のそれぞれで挑戦を続けられている二名の方をお招きして,活動を紹介していただくとともに,本研究会への要望・期待を聞かせていただいた。

◆セミナーでの議論の整理

(1)民間事業体と森林組合の連携による提案型施業の取組
 内山林業(有)は,群馬県の約400ha の山林を所有している林業会社である。今回は,地元の森林組合と連携し,提案型施業を行った結果を紹介していただいた。
 内山林業では,高密度路網と機械の組み合わせで利用間伐を行っており,県のコーディネートで地元の森林組合との連携が実現した。森林組合が所有者との折衝や,補助金等の事務的処理を行い,内山林業が実際の作業を請け負った。間伐率等は,森林組合と現地協議の上,決定し,路網については測量等を森林組合が,実際のルート選定と施工を内山林業が行った。このような森林組合と民間事業体の連携は,提案型集約化施業の促進のための好事例と位置づけることができるだろう。
 ポイントとなる利益配分については,森林組合が販売手数料や路網の測量費などにより収入が得られるような仕組みにしたという。委員からは,このような事例を積み重ね,また他の民間事業体も参加することで,議論が成熟し,ルールが整理されていくことを期待する声があった。内山氏の取組事例から見えてきたように,集約化の担い手をどのように確保し,また役割分担していくか,という点は重要な課題だと思われる。

(2) 森林から工務店までを繋ぐSGEC 認証材の普及・活用について
 中尾氏からは,国産認証材利用促進協議会の活動を中心に話題提供していただいた。
 協議会のメンバーは,年間30〜50 棟を建てる地域の工務店で,中には年間300 棟を建てる比較的大規模な工務店も含まれている。同協議会では,SGEC 等の森林認証を中心に,森林管理の現場から,素材生産,製材,プレカット,工務店までをCoC 認証でつなぎ,消費者とつながった住宅建設のバリューチェーンの構築を目指している。具体例として,静岡県の日本製紙の社有林の事例や,熊本県の新産住拓,山口県の安城工務店などの事例が紹介された。
 これに対して,委員からは,SGEC のCoC 認証の制度において,工務店までもがCoC 認証を取得する必要はなく,プレカット工場が取得すれば十分ではないか,という意見もあった。一方,中尾氏は,認証材の意義を工務店が消費者に直接説明するルートが重要であると考え,工務店によるCoC 認証の取得を重要視しているという。
 また,中尾氏からは,国産材の需要拡大のためには,製品開発が必要であるとして,30mm の杉の無垢の床板や,トドマツ・エゾマツ集成材(日本版ホワイトウッド),認証材の集成材や合板の開発などを行っているとの情報提供があった。

(3) まとめ
 両氏の口から繰り返し聞かれたのは,2008 年末の世界金融危機と連動して下落した木材価格の問題である。中尾氏は,現在の木材価格は1951 年のそれとほぼ同じである一方,当時の現場作業員の日当は一日500〜700円であるとして,抜本的な対策の必要性を強調された。突きつけられた現場からの絶望感に,研究会は誠実に応える努力が求められていることを強く感じた。
 研究会としては,大きく変化してしまった需要と供給の関係を将来的な見通しも含めて整理するとともに,集約化−路網整備−機械化という,労働生産性の向上の方策についても具体的な提案を行っていきたい。また,上記のような経済・社会論や技術論に加えて,これからの時代の制度のあり方についても検討し,総合的な改革パッケージとして示す必要があると考えている。

(文責:相川高信)

議事概要