放置林は宝の山!
林業のセミプロ育成で、山を守る

NPO法人 土佐の森・救援隊

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地域通貨『モリ券』を発行 バイオマスもお金に換える

メンバーが自前の軽トラでC材を運ぶ

メンバーが自前の軽トラでC材を運ぶ

バイオマス用材の集積場。持ち込めばお金になる

バイオマス用材の集積場。持ち込めばお金になる

「モリ(森)券」で、ガソリンを給油

「モリ(森)券」で、ガソリンを給油

しくみはこうだ。土佐の森・救援隊が委託された間伐作業での収入や、山林所有者の許可を得て販売した間伐材の収入などを基金としてプールする。そして作業に参加した人には、1日につき1000円相当の『モリ券』1枚から数枚を支給する。この券は、いの町や高知市内の契約店十数店で利用できる。町内の小さなガソリンスタンドでは年間60〜70万円も使われており、店側も大喜びだという。

「もうひとつの大きな稼ぎ場が、木質バイオマスプラントへの林地残材の搬入です」

仁淀川流域では、林地残材を原料にしたバイオマスで地域の発電や熱利用を行う実験に取り組んでいる。ここに原料となる木くずや枝、端材などを持ち込むと、1トン3000円で買い上げてくれる。土佐の森・救援隊では、市場で売れるA材は出荷し、質の悪いC材は参加者が自由に運んでOK。その際、森林環境保全に対するお礼として(環境支払い)1トンにつき『モリ券』3枚を上乗せ支給するというルールを作っている。

「間伐は、木を伐る以上に、伐った木を運び出すのが大変なのです。まして不揃いのC材は手間がかかり、1トン3000円では業者なんか見向きもしない。けれど、ボランティアに軽トラックでやってきて、帰りがけに積めるだけ積んで、集積所に置いていくと小づかいになるなら、やる気も出るわけです。私は『C材で晩酌を』と言っていますが、そういう気軽で小規模で継続性のある取り組みが、山のペースには合っていると思うんですよ」

すでに隊の10数人が軽トラックを登録しているという。『モリ券』の発行枚数も、2006年が1600枚、2007年には3000枚を超えたそうだ。

林業は元来「兼業」が基本 副業ならばきっと成り立つ

土佐の森・救援隊の目標は、林業のノンプロ、セミプロ層を作り出すこと、と言っても良いかもしれない。

「林業をやりたい、という人は非常に多いです。しかしそういう人がプロになろうとすると、今は森林組合に入るくらいしか道がありません。ボランティアもいいけれど、ずっとボランティアというのも辛いのです。やっているうちに高度な技術も身に付けたくなるし、そうするとイベント的な体験林業では物足りなくなります。だから、副業としての林業という道を開きたいのです」

林業というのは、もともと季節労働の性格が強く、農業との兼業で成り立ってきたものだ。林業専業で生計を立てるのは難しいが、いわゆるボラバイト(ボランティア+アルバイト)や定年後のやりがい林業なら問題はない。経験を積んで、場合によってはプロの自伐林家を目指してもいいし、技術を持たない山林所有者の研修の場としても有効だ。

「2006年には年間46回の活動で1000人以上の参加者がありました。会員の中には自伐林家になった者が2人います。アルバイトや副業、定年後のセカンドワークと位置づけて、ほとんど毎回参加する人も10数人おります。稼ぐ人は、貨幣換算で170万円/年くらいの収入があったんじゃないでしょうか」

ボランティアも技術が必要 報酬には、多くの課題も

高知市内の町内会が、防災用にチェンソーを習いに来ていた。そうした指導活動も積極的に行っている

高知市内の町内会が、防災用にチェンソーを習いに来ていた。そうした指導活動も積極的に行っている

初心者向けの研修風景。女性もチェンソーに挑戦

初心者向けの研修風景。女性もチェンソーに挑戦

セミプロたちの集まりである土佐の森・救援隊は、それゆえ作業も本格的だ。多くの会員がチェンソー取り扱いの講習を受け、安全に関する意識も高い。「山に入る者は、ボランティアといえども一定以上の知識・技術・マナーを習得すべきだ」という考えから、独自の技術等認定委員会を設置し、会員の技術レベルを把握しながら作業を任せている。会員以外の参加者にも、かなり本格的な講習を行っている。

「そういう人たちに『モリ券』を渡して、帰りに地元の農産物とか畜産物とかを買って帰ってもらえれば、地域の振興にもなる。そういう大きな循環を目指しています」

ちなみに中嶋さんは、いの町出身で東京のIT企業勤務などを経て2001年に町へUターン。建設コンサルタントとして働く現役サラリーマンである。中嶋さん自身も、月に数万円分程度の『モリ券』を手にしているが、ここにこれからの課題もある。

「『モリ券』を収入と考える人が出てくると、税金の問題や、最低賃金の問題が発生するでしょうね。私は、あくまでも地域の一定の商品としか交換できない交換券で、地域通貨ですらないと思っていますが。それから労災の問題もあります。今もボランティア保険はかけていますが、毎回のように参加する人への公的な対応は、考えないといけませんね」

排出権と『モリ券』の交換で林業に新たな循環を

中嶋さんの頭の中では、「企業まで巻き込んで、『モリ券』を二酸化炭素排出権に変えて流通させたい」という夢もあるそうだ。自分の行った作業が、どれだけ環境にプラスになったかが目で見えて、しかもそこに貨幣価値が付くとしたら、個人はもちろん企業にとっても大きな動機付けになるだろう。環境活動と経済活動の融合は、世界的な潮流でもある。

「参加している人からも、『ボランティアやから、『モリ券』もなんもいらんけど、地域のためになるから使うわ』という声を聞きます。お金が絡むといろいろ面倒だけど、ボランティアという善意に頼り切っていては、森林は良くならない。『自分の林は自分で守る』を基本に、小規模林家が気軽に頼れる受け皿組織として、この土佐の森・救援隊を育てたいですね」

森林の切実な悲鳴と、やる気ある人の熱意を、いかに強く、長く結びつけるか。この斬新な取り組みに、注目したい。

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