平成17年度

薩摩つげをめぐるある事件木材じゃなかった薩摩つげ!? 鹿児島鹿児島市下曽山真一さん 若林至さん

工場内で、つげの原木と下曽山さん

「ほかの木と違って、つげは管理が難しいんです。半日陰の場所が生育に適しているのですが、北風に弱く、害虫がつきやすいために、肥料など管理に手間がかかってしまう。水はけのいい土壌で育て、必ず3回は移植しなくてはいけない。それでもちゃんと管理さえすれば、杉やヒノキと違って15~20年で商品になる換金木材だし、1本あたりの単価も高いので、老後の貯蓄として大切に育てている方も多いんですよ」
 つげは、その年輪に関係なく、太さのみで価格が決定するという。
 その価格は14cm径で約4万円、15cm径で約5万円といった具合である。
 大量の外国産に押されてはいるものの、やはり薩摩つげの品質の高さとそのネームバリューは現在でも変わることなく、それなりの価格を維持している。
 下曽山さんの広い工場には、つげの原木が大量に山積みされていた。
「1回に60本ほど仕入れます。仕入れで2,000万円ほどかかり、経費が1,300万円ほど、それで1,000万円残ればトントンという収支ですね」
 しかし、つげでもっとも怖いのが根腐れなどの不良品である。つげは水に濡れるとシミができる。
そのため、つげの伐採は晴天が続いた時を選んで行われる。梅雨時の伐採はまずない。そして、つげ内部にできたシミは外からは一切わからない。
「だから、中を開けてみないとわからない、まさしくギャンブルなんです。ここに積んである半分が不良品だと思っているほどですよ」
 つげは、その品質が命ゆえに、たった1本のシミでも製品にはできないと下曽山さんは語る。日本人は、櫛にしても

つげの原木は高価で取引される

印鑑にしても細部にまで完璧を求めるためである。
 工場で製品にならないとはねられた印材用の木片を見せてもらったが、素人目にはどこがシミなのかまったくわからなかった。
 作業現場では、4人の職人さんが働いていた。彼らのほとんどは印材にするつげをカットするのが仕事だが、シミをチェックするのも大事な仕事なのだ。
 そもそもつげは、温帯から亜熱帯地方で生育するため、この南薩という風土が適していた。

つげが特産の頴娃町から美しい開聞岳を臨む