平成17年度

薩摩つげをめぐるある事件木材じゃなかった薩摩つげ!? 鹿児島鹿児島市下曽山真一さん 若林至さん

●換金木材として価値の高いつげ

 鹿児島県南薩(なんさつ)地方――。揖宿(いぶすき)郡の頴娃町(えいちょう)や山川町は、つげの産地としてつとに有名である。
「櫛になりたや薩摩の櫛に 諸国娘の手に渡ろ」
 江戸時代からこう歌われるほど、全国にその名を知らしめた薩摩つげの櫛――。材料が硬く、強く、緻密さと粘りがあり、色の艶が美しい薩摩つげは、細い歯でも折れにくく、まさに櫛になるために生まれてきた木材といえる。
 また現在では、その材質の利点から印鑑の材料(印材)としても多く用いられている。
 しかし、ふだん私たちが目にする「つげ」の多くは、国産ではなく、外国産であることはあまり知られていない。
「本つげ」などと表示されたそれらの「つげ」は、その多くがタイ産で、しかもそれはつげとはまったく別種の木材であった。性質も本来のつげとはだいぶ異なり、成長が早いために、そして価格も安いこともあって、いつの間にか日本で出回るつげの大半を占めるようになったという。
 鹿児島市上福元町で「紫原ツゲ印材」を営む下曽山

櫛のほか、印鑑、将棋の駒、つげのボールペンもある

真一(しもそやましんいち)さん(52)は、昭和23年につげ製作をはじめた父親の仕事を受け継ぎ、薩摩つげの仲立ちと加工を手がけている。
「つげは、その90%が印材として印鑑メーカーに行き、残りの10%が櫛の材料や将棋の駒として使われています」
 下曽山さんにつげ畑を案内してもらった。
 つげは、山に植えられるものではなく、畑、または農家の畑の周りや庭の一部に、まるで庭木のように植えられている場合がほとんどだった。
 

つげ畑は、あまり陽当りが強くなく、北風の来ない場所が選ばれる